2022年 天皇賞(春)回顧 – 株式会社FANSS 株式会社FANSS 2022年 天皇賞(春)回顧 – 株式会社FANSS

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2022年 天皇賞(春)回顧

兄弟で勝ち取った春の盾

2022年5月1日 15時44分 タイトルホルダーが2022年の天皇賞春を制した。スタートから勢いをつけて先頭に立ち、道中は息を入れながら逃げ、直線手前のコーナーから加速して最後の直線に向かうと、1頭だけ素晴らしい手応えで7馬身差をつけて圧勝。前年の菊花賞に続く2つ目のGⅠタイトル獲得となった。

タイトルホルダーは、父ドゥラメンテ母メーヴェという血統。ドゥラメンテの初年度産駒である。父ドゥラメンテは皐月賞、ダービーを制した名馬であったが、残念ながら2021年に病気のため死去してしまい、種牡馬としてはたった5世代しか残せなかった。今年の桜花賞をスターズオンアースが制し、ドゥラメンテ産駒は2世代連続で3歳クラシックを勝つという素晴らしい結果が出ているだけに残念だが、タイトルホルダーがこれから中距離のGⅠタイトルを手にして、人気種牡馬になってくれることを期待したい。(長距離レースが少ないこともあり、長距離実績だけでは人気が出ない)

タイトルホルダーには賛辞しかないが、今年の天皇賞春は運命の糸が絡み合った結果となったので、それについて書いてみようと思う。まずは手綱をとる騎手について。タイトルホルダーの騎手は横山和生騎手。1993年生まれ(早生まれ)で、今年は騎手生活12年目で初めてのGⅠタイトルとなった。そして祖父(横山富雄)、父(横山典弘騎手)とあわせて3世代連続での天皇賞春制覇という偉業である。もちろんJRA初。

なお昨年の菊花賞を勝った際にタイトルホルダーに跨っていたのは横山武史騎手で、横山和生騎手の弟であった。兄弟騎手が同一馬でGⅠを制したのも史上初である。GⅠを勝った騎乗馬を手放すというのは珍しいが、横山武史騎手は昨年の年度代表馬となったエフフォーリアの主戦騎手でもあり、年末の大レース有馬記念でどちらかを選ばなければならず、弟から兄への乗り替わりとなった。なお選ばれた方のエフフォーリアは、しっかりと有馬記念を勝っている。

今回の天皇賞春はそれだけではない。タイトルホルダーの姉で、JRAオープン馬として最軽量記録を作ったメロディーレーンも出走していた。中央競馬で走るサラブレッドは通常450kg~530kgぐらいの体重が普通であるが、なんと本レースでのメロディーレーンの馬体重は353kgであった(これでも前のレースより6kg増えているのだが、他の馬の馬体重は454kg~518kgなので断トツで小さい)。競馬では馬体重に関係なく騎手を含めて50~60kgの重さを背負って競走するため、極端に小さい馬にはその斤量が不利に働くはずなのだが、メロディーレーンは18頭中9着となり、その非凡なスタミナを示した。

というわけで今年の天皇賞春は、馬としては弟が、騎手としては兄が栄冠に輝いた。武豊騎手と武幸四郎調教師の兄弟GⅠ制覇も見てみたいが、こんな形の兄弟制覇を観られるのも、競馬の醍醐味かもしれない。

(文責)岩永

2022年5月2日 5:07