最初に金貨を見せるというのは、大事なことをまず伝えよう、という意味です。プレゼンを行うことになり、入念に資料を作っていざ本番に臨んだら、途中に熱を入れ過ぎて結論をちゃんと説明できずに時間切れに。これは私が新入社員の時に実際にやってしまった失敗です。
この失敗は何度も思い出して、そのたびに悔しい思いをしています。なぜそんなに悔しいかというと、最後の最後で全く新しい切り口を見せて、なるほどそうきたか、と思わせる構想で準備したのに、時間切れで、最もやりかったどんでん返しが出来なかったからです。最後のオチのために入念にフリを入れていたら、そっちに力を入れ過ぎてオチが言えずに時間切れ、という感じです。まさに本末転倒。
わかりやすいように具体的に恥を晒しますが、確か「地球温暖化について」という内容で、新人研修の最後に役員たちにプレゼンするという企画でした。私のプランは、まずその当時に環境省が旗振りして言い始めた「チーム・マイナス6%」というプロジェクトの無意味さを数字で示し、地球温暖化を本気で抑止しようとするならば、国内の火力発電を全て原子力発電に切り替えるぐらいの対策が必要であることを説明し、最後に「むしろ地球温暖化を抑止できない場合の対策を今から考えておくべきだ」と、セカンドベストを想定しましょうというアピールで終わる予定でした。
現行プロジェクトでは地球温暖化の抑止は到底できない→本気でやるなら原子力発電の大幅増しかないと説明して、温暖化を抑止したいとしても本当にそれやりますか。むしろ温暖化後の未来を想定した食料確保や水源確保について今から検討しておくべきじゃないですか。と新しい視点を提示してドヤ顔で終わるつもりが、時間切れで結論が言えず、原子力発電を推進するだけのプレゼンになってしまったのです。
役員たちの評価は当然、低いものでした。3番目か4番目ぐらいの特別賞をお情けで貰った気がしますが、他人の評価よりも、言いたいことが言えなかった悔しさが強く残っています。
なぜこんな失敗をしてしまったのか。その当時に考えた理由が3つあります。一つは、最も効果的な喋り方をしたい、と考えたこと。もう一つは、事前に時間内に喋りきる練習をしなかったこと。最後は、「時間厳守」というルールを厳守してしまったこと、この3つです。
最も効果的な喋り方をしたいと考えると、つい最後に大どんでん返しを持っていきたくなります。これが小説とかの文章ならば途中がどんなに長くなっても「最後の数ページで感動の涙が止まらない」みたいな効果を出せますが、実際に喋る場合には時間内に収める必要があります。最後まで説明できれば良いが言えなかったら大失敗、という一か八かの戦略を採用してしまったのです。
一か八かの戦略を採用したのに、事前の準備も足りず、さらに臨機応変な対応もできず、ということで、失敗は必然だったとも言えます。プレゼンのような一発勝負の場面では、事前に準備しすぎると本番での熱量が足りなくなる危険がありますし、(個人的にはクオリティが全てを凌駕すると考えているものの)ルール違反は失格という信念を持つ方もいらっしゃるので、最初に手の内を見せるという作戦が「セカンドベスト」として有効ではないかという結論になります。
ということでタイトルに戻りました。
うちの店はお前のような貧乏人が来るところじゃない、という目つきをしている店主には、最初に金貨を見せましょう。ある日おじいちゃんの遺品を整理していたら、机の施錠された引き出しに隠されていた不思議な地図を見つけて・・と始めてしまったら、「大金持ちになった」と言えるまでに、きっとつまみ出されてしまうでしょう。
(文責)岩永
2022年5月1日 0:30