勝者だけが全てを得る(2022日本ダービー回顧) – 株式会社FANSS 株式会社FANSS 勝者だけが全てを得る(2022日本ダービー回顧) – 株式会社FANSS

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勝者だけが全てを得る(2022日本ダービー回顧)

歴史とは勝者の日記の寄せ集めである

今年の日本ダービーが行われたのは5月29日である。しかし、その回顧を書いている今日は、翌週の安田記念が終わってさらに数日経った日である。イクイノックスが敗れてしまったことにショックを受け、悲しみにくれていたからである。断じて馬券が外れたからではない。

振り返れば、昨年の東京スポーツ杯をイクイノックスが制した時に、この馬は三冠馬になるのでは無いかと思ったことが始まりである。その圧倒的なパフォーマンスと、父親であるキタサンブラックの数奇なストーリーとに魅了され、今年の3歳クラシック競走を楽しみにしてきた。

そのイクイノックスが、皐月賞はゴール前の坂で止まって2着、ダービーは追い出しが遅れての2着という結果に終わってしまった。残念でもあるし、これだけの馬がどうして、というやりきれなさもある。やりきれなさとは、どちらも10回やれば半分以上は勝てるレースだったのに、両方負けてしまうなんて、という事である。(レース前には10に8は勝てるとも思っていたが・・)

しかし結果は非情である。勝率を高めるためにどれほど努力を積み重ねようとも、不戦勝を除けば100%はない。9回裏ツーアウトから逆転満塁ホームランを打たれたり、13面待ちで単騎待ちに負けることもあれば、アディショナルタイムでの大逆転もある。その意味で、日本ダービーを制したドウデュース号と武豊騎手、そして関係者の方々には賛辞しかない。素晴らしい勝利であったことは間違いない。

なおドウデュースと武騎手のコンビは秋の凱旋門賞に挑戦するということなので、人馬ともの無事な完走と、最高の結果を期待したい。ロンシャンの芝が向いているかはわからないが、「凱旋門賞勝利」という日本競馬界の悲願、いやある意味では呪いを解き放ってくれることを祈りたい。

閑話休題。イクイノックスの話に戻ろう。私の感じる悔しさのありかは、「すごく強い馬なのに、結果が出ていないために正当に評価されていない」という思いである。競走馬の評価とは、格の高いレースをどれだけ勝利したかである。レースの格は「G1」(Jpn1)を頂点としているため、G1を制しているか、さらに複数勝っているか、という点が評価基準となる。

ジオグリフは皐月賞を勝ち(ダービー7着)、ドウデュースはダービーを制覇したが(皐月賞3着)、イクイノックスは皐月賞もダービーも2着だったのでG1馬ではない。レースで見せた能力はこの2頭に劣っていないが、実績では明確に劣るのだ。両レースとも不利な大外18番枠であった等の不運は省かれ、勝者の名前のみが記録されていく。

歴史とは勝者の日記の寄せ集めであり、勝った者だけが勝つ方法を語る事ができる。ということは、やりきれなさを消化しようとこんな風にキーボードを叩く人間では、決して歴史を作ることなんてできやしない、という事なのかもしれない。

(文責)岩永

2022年6月9日 2:26