2022天皇賞・秋(回顧) – 株式会社FANSS 株式会社FANSS 2022天皇賞・秋(回顧) – 株式会社FANSS

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2022天皇賞・秋(回顧)

秋分を越えて・・光と影の交錯

2022年の天皇賞・秋が終わった。勝ったのは3歳馬のイクイノックス。私のお気に入りの馬だ。皐月賞、ダービーと大外枠から2着という悔しい競馬を続けた今年の春。それが夏を越えて、秋分を越えて、古馬をも越えて、ついにG1タイトルを掴み取った。

イクイノックスは物凄く強いと確信してきた自分としては、この結果は素直に嬉しい限り。しかし残念ながら3着に来たダノンベルーガを切ったせいで馬券は外してしまった。お気に入りの馬以外はちゃんと見られていないなぁと反省しきり。

レース自体は記憶に残るすごい内容だった。パンサラッサがハイペースで逃げ、最初の1000mを57.4秒で通過。これはサイレンススズカが1998年の天皇賞秋で記録したペースと同じ。パンサラッサはそのまま後続を20馬身程度引き離して第4コーナーを曲がり、圧倒的リードで直線に向かった。直線半ばでもまだ10馬身程度の差があり、これは届かないんじゃないだろうか、そう思った瞬間に外から物凄い脚でイクイノックスが飛んできて、一瞬で差し切ってゴール。

上がり3ハロン(最後の600m)のタイムは、パンサラッサの36.8秒に対して、イクイノックスは32.7秒と4.1秒もの差がついている。ゴールのタイム差は0.1秒なので、600mで4.0秒を逆転したことになる。1馬身が約0.2秒なので4秒差は20馬身差に相当する。普通の馬ならまず届かないセーフティリードだった。パンサラッサも素晴らしい能力を示したと感じる。

1分57秒5というレースタイムのうち、1分57秒3までパンサラッサは先頭だったが、最後の0.2秒で運命は暗転。2頭の脚質的にも、そして結果としても、一瞬で光と影が交錯したように感じた。イクイノックスの馬名の由来“Equinox”は、昼と夜の時間がほぼ同じになる日(春分・秋分)のこと。昼と夜のように真逆の戦法で、ほぼ同じタイムでゴールし、そして陰と陽が一瞬で入れ替わったレース。まるで夕焼けのように美しい内容だった。

なお先述のサイレンススズカは、後続に20馬身近い差をつけて3コーナーの大ケヤキを通過したところで、左前脚を骨折して競争中止・予後不良となってしまった。全速力で走っているレース中に骨折したにも関わらず、鞍上の武豊騎手を振り落とすこともなく、折れた脚を使って減速し、コース外側まで移動したサイレンススズカ。そんな賢くて強い素晴らしい競走馬が、故障によって安楽死処分となってしまったことは未だに残念でならない。

イクイノックスがこれからキタサンブラックのように成長していくとすれば、さらに強い馬になって、たくさんの大レースを制してくれるはず。父キタサンブラックのように、怪我無く無事に種牡馬になれることを祈るのみ。

(文責)岩永

2022年11月2日 14:04